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ジョー・シュライバー「屍車」

20070108195529[1] 屍車 
 ジョー・シュライバー
 集英社文庫






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原題は「CHASING THE DEAD」です(いい題名ですねえ)。
お話ですが、車を運転中のスー(スーザン)の携帯に、突然「娘を預かった」と誘拐犯からの着信がありまして、
誘拐犯の指示通りに方々へ車を走らせるうちに、次々と怪異に巻き込まれ…といった、
誘拐もの、ないしタイムリミットもののサスペンスに、ホラーの風味を和えた、題名通りの内容です。

サスペンスとホラーを足すという、おそらく初源の着想を成立させる為の、
整合性を持たせようとする苦心の跡が、そこかしこに窺えますが、むしろそれ故に多くのホラー作品が直面する
問題に正面衝突してしまった感があり、私は読んでいてそこが非常に面白いと感じました。

ホラー作品では、怪異に何らかの法則性が与えられることが多いと思います。
この小説の怪異にも明快な法則性があり、それは読むうちに明らかになるのですが、
この小説の場合、ホラーにサスペンスの要素を導入する為の理由付け、という側面が強過ぎるように思いました。
怪異に法則性を与えることには、以下の問題が付いて回ると思います。
果たしてその怪異は明らかにされた方が怖いのか、明らかにされない方が怖いのか、という問題です。
この問題にはそれぞれの人の見解や解釈、生理もあって、一様ではありませんが、
デ・ラ・メアの「朦朧法」の記述なども、この問題への、ある解答の一つのように思われます。
この小説の場合、怖いというよりも、何やら滔々とこじ付けを読まされているような気に…。

また、もう一つには、そもそも誘拐犯が主人公に電話であれこれ指示を出すのですが、
何だかやたらに饒舌で、怖い人がこんなに軽口ばかり叩いてていいんだろうか、というのが実に気になりました。
この小説はむしろ、「TAKING THE DEAD」という感じで、まあ喋ること喋ること!
こんな饒舌な怪物は却って珍しくて、いっそ面白いくらいです。
怪物は喋る方が怖いのか、無言の方が怖いのか、または襲ってくるのが怖いのか、じっとしているのが怖いのか…。
このことは、先の怪異の法則性に付随する、今一つの大きな問題のように思われます。

この辺りのことに、どーんと正面衝突したこの小説を読みながら、随分と考えさせられるものがありました。
作品自体は、展開が早く、描写も臨場感があって、地力は十分にある作家さんだと思います。

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ホラー小説専門同人誌、
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活動状況はほぼ更新せず、大半は読んだホラー小説のことを、ぶつくさ書いてます。
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