那智史郎 宮壁定雄編「ウィアード・テールズ3」

20070108195529[1] ウィアード・テールズ3 
 ニッツィン・ダイアリス他 那智史郎 宮壁定雄編
 国書刊行会






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編者によりますと、第3巻は同誌の黄金時代前期(1930~1935年)の作品群を収録したもので、
前回紹介した第2巻は、興隆時代(1927~1929年)に当たるそうです。
さすが黄金時代、やっとお魚がぴちぴち元気にはぜてきたといいますか、活きのいい作品が揃って参りました。

巻頭のロバート・E・ハワード「はばたく悪鬼」から、いきなり修羅場の幕開けです!
この作品は冒険家ソロモン・ケインの冒険譚の一つで、辺境の地に巣食う蝙蝠人間とケインの攻防が描かれますが、
ケインの闘争本能が凄まじ過ぎて、蝙蝠人間の方が却って怯えを示す有り様です。
このハワードという人ですが、殊に闘争の場面になると、語り口が極度に高揚する人で、獣じみた獰猛さがあります。
このような、地金が剥き出しになった文章を持った人は、やはり作家として相当強いと改めて思わされました。

個人的に印象深かったのが、H・S・ホワイトヘッドの「悪霊夫人」です。
内容は全く題名通りなのですが、この作品は物事を語る順序が面白いです。
冒頭はこんな感じです。
西インド諸島の住民が腰蓑を付けていると誤解される事例→主人公が腰蓑を売り付けられそうになっている老婦人と知り合う→たまたま家が近所で仲良くなり、一家でトランプに興じる→夫人はやたらトランプが強く、普段はとても温厚な人なのに、トランプの時になると人格が豹変する(何だかおかしいな)…
こういう婉曲的な進め方も、着地点をあれこれ考えながら読む楽しみがあっていいですね。
個人的には、メタフィクション的な身辺雑記から話を始める、三津田信三の作品にも共通するような、
語りのプロセスの面白さを感じました。

また、アイデアの見事さでは、マリー・E・カウンセルマンの「三つの銅貨」が一歩抜きん出ていると思われます。
ジェイコブズの「猿の手」の変奏を思わせるような、人に幸運と不幸をもたらす三つの銅貨のお話です。

最後は、楽しみにしている連載作品、グレイ・ラ・スピナの「闇からの侵入者」ですが、
今回でようやく邪悪の正体が明らかになります(といっても、とっくにお察しが付くのはご愛敬ですが…)。
今回は主人公の叔母がお茶会に招かれると、居合わせた曰く付きのロシア令嬢に仕掛けられる心理戦が見どころで、
まるで学校の教室で、自分を嫌っている人間が主導権を握り、少しずつ肩身が狭くなっていく時のような、
現実でも身に覚えのありそうな、じんわりと嫌な感じが、実に上手く描けています。
この人も天性の物語作家だと思わせる、素朴ながら滑らかなな語り口を持った作家だと思いました。
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No title

この『ウィアード・テールズ』シリーズ、3巻あたりから、ぐっと面白くなりますね。とくに、カウンセルマンの『三つの銅貨』は、物語の引き込み方が見事だと思います。

No title

>kazuouさん

コメントありがとうございます。

そうですね。前巻がラインナップとしては、今一つしおしおな感じでしたものね…。
「三つの銅貨」は、まずアイデア自体が良いですよね。さらっと書いてますが、街ごと巻き込む騒動になってて、以外に壮大な(?)お話だったのですね。
私はハミルトンの「帰ってきた男」なども好きでした。
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ホラー小説専門同人誌、
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