「今この時」
Twitter300字ss公募用掌編です(下記、主催アカウントの紹介文です)。
Twitter300字ssとは、月に一度最終土曜日に発表されるお題で、一週間掛けて300字の小説を書き、公開して交流や宣伝に役立てようという企画です。
第41回お題 「新しい」
題名 「今この時」
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手続きと書類の二十年だった。市民課ではよく、「何か新しいことないかな」という声が聴こえた。その度に私は、新しいとは一体いつまでを指すのかと思っていた。新人の堤は一月もすると、古株のように職場に馴染んだ。近所では愛顧したカレー屋が店を畳み、替わりに赤いバルコニーの洒落たベーカリー屋が開店した。通勤の度にすれ違うスーツ姿の女性は髪形が変わり、毎日同じ車輌のホームで電車を待つ男の姿を見なくなった。同じ天候の日は二度となく、空は毎回違う表情の雨を降らせる。三月の暮れ、強風でこちらに吹き寄せる桃色の桜吹雪の只中にあって、私は今この瞬間にしか、こんなことは起きないと思った。要するに毎分毎秒が常に新しい。
Twitter300字ssとは、月に一度最終土曜日に発表されるお題で、一週間掛けて300字の小説を書き、公開して交流や宣伝に役立てようという企画です。
第41回お題 「新しい」
題名 「今この時」
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手続きと書類の二十年だった。市民課ではよく、「何か新しいことないかな」という声が聴こえた。その度に私は、新しいとは一体いつまでを指すのかと思っていた。新人の堤は一月もすると、古株のように職場に馴染んだ。近所では愛顧したカレー屋が店を畳み、替わりに赤いバルコニーの洒落たベーカリー屋が開店した。通勤の度にすれ違うスーツ姿の女性は髪形が変わり、毎日同じ車輌のホームで電車を待つ男の姿を見なくなった。同じ天候の日は二度となく、空は毎回違う表情の雨を降らせる。三月の暮れ、強風でこちらに吹き寄せる桃色の桜吹雪の只中にあって、私は今この瞬間にしか、こんなことは起きないと思った。要するに毎分毎秒が常に新しい。
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