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ロアルド・ダール編「ロアルド・ダールの幽霊物語」

20070108195529[1] ロアルド・ダールの幽霊物語
 L・P・ハートリー他
 ハヤカワ・ミステリ文庫






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 やっと同人誌イベントも終わり、執筆も一段落しましたので、久々に更新します。
 著者のロアルド・ダールという人ですが、「あなたに似た人」など、捻りの効いた、所謂「奇妙な味」の作品を数多く残した重鎮です。ダールは無数の過去の怪奇小説の短編群から、1話完結のテレビドラマに仕立てる為に名作を選出しましたが、結局はドラマ化の企画自体が頓挫。残されたラインナップから、十四編の怪奇小説を再選出したアンソロジーになります。
 ダールは古今の名作と呼ばれる短編を七百編以上読み漁り、「恐怖を与えるもの」を基準に、厳しい採点方式で作品を選出したその成果が、本書になるそうです。厳しく選出されただけあって、さすがに全体的に質の高い、優れた怪奇小説のアンソロジーになっていると思います。

「恐怖を与えるもの」を基準にしますと、下記の二点の傾向が強くなることは、どうしても否めないようです。まず最初に、大半がどこかで既に選出された名作中心になってしまうこと、次に、大半が幽霊譚になってしまう点です。とうの昔にホラーは様々に細分化し、必ずしも怖さだけを追及するものではなくなったのは、誰しもが何となく認識している事柄かと思いますが、こと真面目に怖さを追及し始めますと、その門は存外狭いのかな、という印象を読みながら受けました。やっぱり怖いとなりますと、私たち人間と同じ姿ながら、異界の存在である幽霊に帰着せざるを得ないのでしょうか?かつてのポーやラブクラフトなどのように、新たな恐怖像が更新された歴史は、確かに過去にもあったのですが、しかし、それが本当に怖いのかと考えますと、そこは個人的主観も含め、色々と考えさせられるものがあると思います。

 また、このアンソロジーの編者のダールらしいところは、幽霊譚の中でも捻りの効いた作品が多いところかと思われます。その典型的な例が、モダンホラーの代表的な作家、L・P・ハートリーの「W・S」かと思いますが、見知らぬ他人から届いた絵葉書、という他愛のない出だしから、気付きますと事態は異様なものになっているという、ハートリーの技巧が冴えた作品になっています。
 「怪奇小説傑作集2」にも既訳のある、イーディス・ウォートンの「あとにならないと」や、老婆の奇妙な習性が最後に一息に明かされる、Ex-プライベート・Xなる変なペンネームの小説家(A・M・バレイジの変名)の「落葉を掃く人」なども、それぞれに一工夫が凝らされた小説だと思います。

 ここから先は個人的見解になりますが、特に読み応えがあったのが、下記の二作です。
 三兄弟、全員怪奇小説に手を染めたベンスン兄弟の次男、E・F・ベンスンの「地下鉄にて」は冒頭から、有限である時間と空間は想像ができない、という宇宙認識から端を発し、その過程の中で徐々に霊体が実体化するという、今読んでも十分に面白く、かつ霊体が具現化する描写も堂に入った、実に素晴らしい短編です。不勉強にして私は、E・F・ベンスンの小説はあまり読んだことがないのですが、名作「いも虫」にしましても、一筋縄ではいかない奇想溢れる小説で、まずアイデアが何よりも素晴らしい小説家だと思います。ほんと、キングの対極のような小説家です。
 個人的に最も印象深かったのが、この選集で最も尖った小説家、ロバート・エイクマンの「鳴りひびく鐘の町」です。このエイクマンという人は、従来のホラー作法からは大きく逸脱して、怪異の原因が分からないばかりか、その怪異が本当にあったことかすら疑わしい、といった独自の婉曲的表現に辿り着いた人です。寂れた土地に新婚旅行に来た夫婦の一夜を描いたこの作品は、エイクマンにしては実に真っ当な幽霊譚ですが、メインアイデアの馬鹿馬鹿しさは特筆ものです。よくこんなアイデアで書くなあ…と思いますが、ところが!それもエイクマンの筆にかかりますと、土地の情景、怪し過ぎる住人たちの描写など、エイクマンのいいように、読者は徐々に不穏な領域に引き込まれてしまいます。ここではクライマックスは明かしませんが、かなり壮観です。一種の奇想に、見事に骨太な実感を与えられるエイクマンの筆遣いには、ほんと痺れました。こんな自在な筆さばきができたら、ほんと執筆が愉しいだろうなあ…と羨むような筆遣いです。

 さすがに選ばれた全ての作品が怖いと思いませんでしたが、私見ですと、「徐々に怪異が近付いてくる(或いは露わになる)」パターンの作品は、怖くできる余地がまだあるのかなと考えておりまして、このパターンの作品が多かったように思われました。典型的なのは先のハートリーの「W・S」と、シンプルながら怖い、ローズマリー・ティンパリ―の「ハリー」辺りでしょうか。
 本当に怖さを追求する際に、この本が座標軸になるとまでは言い切れないと思いますが、思い返して考えるには十分な、素敵なアンソロジーだと思いながら読ませて戴きました。
 
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ホラー小説専門同人誌、
「DAMMED THING」告知用ブログです。
活動状況はほぼ更新せず、大半は読んだホラー小説のことを、ぶつくさ書いてます。
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