那智史郎 宮壁定雄編「ウィアード・テールズ4」
![20070108195529[1]](http://blog-imgs-97.fc2.com/a/b/c/abc01784/20161229154849328.jpg)
ヘンリー・カットナー他 那智史郎 宮壁定雄編
国書刊行会
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
この第4巻は、黄金時代後期(1936年~1939年)の作品を収録したとのことですが、
あれ?また全体的にB級度が増した印象が…。
巻頭のロバート・ブロックの「暗黒神の神殿」からして、隠されたナイアルラトホテップの神殿には、人類の未来が壁画で!
と、派手に風呂敷を広げた割りには、この素朴な終わり方…。初期ブロックらしいB級作品です。
原形質の怪物を扱った、ソープ・マックラスキーの「しのびよる恐怖」では、
怪物を退治するには、怪物に取り込まれた時に、意志を強く持つことだとされるのですが、
この退治法は、フランク・ベルナップ・ロングの「千の足を持つ男」でも使われておりました。
細胞の塊に過ぎない原形質に、何故意志が通じるのか、また、それを是と当時は受け止めていたのか、
考えると何とも不思議な気がします。
「怪人悪魔博士」という作品は、題名通りの悪い人と、探偵との対決を描いた作品ですが、
この怪人、すごい能力をお持ちの割りには、動機が何ともセコく…。何というか、微笑ましい感じがします。
このシリーズはどうやら8作続いたそうですが、これは続きを読んでみたいものです。
中には、「悦楽の館」という、悪の催眠術師の姦計を、二人称の形式(!)で語る珍品もあります。
巻末は楽しみにしている、「闇からの侵入者」ですが、終盤手前に至って、ようやく周囲に災いが及び始め、
真っ当なホラー的展開を迎えます。そういう意味では、展開がかなり遅い部類のホラー小説とも言えますが、
この作品の場合、素朴な叔母の語り口調が実に心地良く、この泰然としたペース自体に特徴があると思います。
こうして居並ぶB級ホラー小説群を読みますと、B級精神というのは、整合性や作品の収拾よりも、
「とにかくこれが書きたい!」という獰猛な欲望の方を優先してしまった、ある種の冒険に近い試みなのかな、
などと考えながら、愉しく読ませて貰いました。中には、単に浅慮なだけ、という作品もあったようですが…。
スポンサーサイト